売れるものには〇〇がある


 あなたの売り物は、どうすれば売れるようになるのでしょうか?

 口コミなどで苦労せずに売れているものもあれば、反対に、一生懸命頑張っているのにまったく売れないものもあります。この違いはどこにあるのでしょうか?

 また、人を集めているサイトと、なかなか注目を集められないサイトがあります。これは、一体何が違うのでしょうか?

 新刊書籍『どうすれば、売れるのか?』では、「人を惹きつけるもの」「注目を集めるために不可欠の要素」を解き明かし、そして、どうすればそれを作り出せるのかを解説しています。

 みなさんは、何かしらのビジネス、集客、発信活動をしている方だと思います。多くの方が、自分が行っている活動・ビジネスに注目を集めたいと思っています。

 そして、「どうすれば、売れるのか?」を常に考えているでしょう。しかし同時に、人が何に惹かれるのか、人の注目を集めるためにはどうすればいいのかが、イマイチつかめずにいます。

書籍『どうすれば、売れるのか?』では、その答えを解き明かしていきます。

 新しく作る商品だけでなく、今ある商品が売れるようになるためのコンセプト(考え方、概念)の見つけ方をお伝えしていきます。コンセプトとは、概念・考え方ですね。つまり、「売れるコンセプト」とは、「売れる概念・売れる考え方」ということです。ただ、ここには「何についての考え方か」が抜けています。

 売れる考え方とは言うけれど、「何を考えればいいのか?」が抜け落ちているわけですね。だから「売れるコンセプトを考えなきゃ!」といっても、なかなか答えが出ないのです。

 そして、結論から言うと、考えるべきものは「その商品が持つ“コンテンツ”」です。

 商品が持つコンテンツを魅力的にできれば売れるし、魅力的にできなければ売れません。コンセプトを考えようとすると、何からどう考えればいいのかわからず、前に進めません。考えるべきことは、「その商品が持つコンテンツ」なんです。「いいコンセプトのビジネスだね」と感じられる場合、それは、そのビジネスの「コンテンツ」がいいということです。「いい商品コンセプトを考えよう」とは、つまり「お客さんがほしがるコンテンツを持った商品を考えよう」ということです。

 どういうことか、これから詳しく解説していきます。

たとえば、価格.comというサイトがあります。主に家電商品の価格情報(価格比較)を掲載しているサイトです。価格.comのサイトに行けば、自分がほしい商品が、どの店でいくらで売っているかがわかります。つまり、「最安値の店」がわかるわけです。

 インターネットの通販サイト同士を比べてどっちが安いかを比較するのは簡単ですが、実店舗の値段を調べて比較するのは、一般消費者には労力がかかりすぎます。でも、価格.comを見に行けばそれが一発でわかるわけです。

 価格.comは、多くの消費者に注目されて大ヒットのインターネットサイトになりました。 価格.comのサイトにアクセスが集まるのは、なぜでしょうか? ネーミングがおもしろいから? 新聞や雑誌など、いろんなメディアに取り上げられたから? デザインが見やすいから? 検索エンジンで、上の方に表示されていてクリックしやすいから?

 それらの要素もゼロではないと思います。ただ、どれも本質的な決定打にはなっていません。つまり、ネーミングがいいからアクセスするわけではなく、メディアに取り上げられたからでもなく、デザインがいいからでもないのです。

 消費者が価格.comのサイトにアクセスするのは、価格.comが提供している「コンテンツ」に魅力を感じるからです。

 価格.comのサイトに消費者がアクセスするのは、そこで提供されている「商品の最安値情報というコンテンツ」に魅力を感じ、そのコンテンツをほしいと思うからですね。

 これは当たり前、かつ非常にシンプルな事実ですが、多くの提供者が忘れてしまっていることでもあります。自社のオウンドメディアを作りたい、自分のブログにアクセスを集めたい、売れる商品・サービスを作りたいと思っている提供者はとても多いです。

 ですが、ほとんどのケースでは、自分たちが提供しているものの中身より、キャッチコピーやデザインが注目されてしまっています。そして、自分たちが提供する中身を磨く前に、とにかくメディアで紹介されることを必死に願っていたりします。それではお客さんの注目は集められませんし、ましてやお金をもらうこともできないでしょう。

 すべては中身、すべてはそのサイト、サービス、商品の「中身(コンテンツ)」が人を惹きつけるかどうか、です。

バブルが崩壊してから、多くの企業の商品がなかなか売れずに残っています。それに対し、日本は長らく「モノづくり」で栄えてきた、そして今はモノ余りの時代だから商品が売れなくなった、とよく言われます。日本経済が低迷しているのは、モノづくりしかできないからとも言われます。ですが本当にそうでしょうか?

 モノが足りていなかった時代でも、消費者は「モノ」を買っていたわけではありません。自動車や家電がバカ売れしていた時代がありました。しかしその時代でも、「自動車」というモノ(物体)が求められていたわけではありませんね。家電という金属が求められていたわけではありません。

 自動車や家電を買った時に得られる、何か他の「ほしいもの!」が手に入るから、それを買うんです。そして、今となってはそれらの「ほしいもの!」が手に入らなくなったから自動車や家電が売れなくなっているのです。

 つまり、どんな商品であれ、消費者はその物体を購入していたわけではなく、その物体としての商品が持っている魅力、持っている力、それを使って実現できるものを買っていたのです。

 それを書籍『どうすれば、売れるのか?』では、「コンテンツ」と定義します。コンテンツと聞くと、アニメやゲームを思い浮かべる方が多いかと思います。一般的には、コンテンツはデジタルのエンターテインメントとして使われますが、決してそれだけがすべてではありません。

「コンテンツ」とは、あくまで「中身」のことです。すべての商品には「中身」があります。当たり前ですが、映画のDVDを買う時、消費者はそのDVDのプラスチックがほしくて買っているわけではなく、「中身」である映画を買っています。同じように、冷蔵庫は、物質的には「鉄」ですが、「中身」は「冷やす」という機能で、消費者が冷蔵庫を買うのは、その機能がほしいからです。

 どんな商品でも「中身」を持っていて、消費者がその商品を買うのは、その「中身」、つまり「その商品が持つコンテンツ」がほしいからです。

 そのため、商品・サービスが売れるか売れないかは、その商品・サービスが持っているコンテンツが魅力的か、そしてその魅力が消費者にどう伝わるかで決まっているわけです。

 どんな商品でも、そのコンテンツが評価されて買われています。そして、その商品が持つコンテンツに魅力がなければ、いくら高価な材料を使っていても、いくら有名なデザイナーがデザインしても、売れないのです。

 つまりは、モノがあふれているから売れないのではなく、顧客が求めているコンテンツが商品・サービスに入っていないから売れない、ということなのです。

このコンテンツの概念をご理解いただくために、再度説明を加えます。世の中を見渡すと、様々な商品が売られています。スーパーに行けば野菜、果物、パン、おにぎりが並んでいます。家電量販店にはテレビ、冷蔵庫、パソコン、携帯電話が並んでいます。

 それ以外にも多くの店舗で、多くの商品が売られていて、ぼくら消費者も日々多くの商品を買っています。みなさんも、つい最近も何か商品を買ったでしょう。

 あなたはなぜその商品を買ったのでしょうか? 言い方を換えると、何を求めてその商品を買ったのでしょうか?

 家電商品を考えるとわかりやすいですが、消費者が家電を買う時、求めているのはその家電の物質ではありませんね。掃除機を買うのは、その掃除機を形作っている「プラスチック」を買っているわけではありません。みなさんが買っているのは、掃除機が果たす「役割」ですね。

  つまり、「掃除機を使ってできること」があり、みなさんはその「できること」を買っているわけです。すべての商品は同じように「役割」「それを使ってできること」があります。そして、その役割を通じて、商品はぼくらに何かしらの変化をもたらしてくれます。

 掃除機を持っていたら、部屋をきれいにすることができます。電子レンジを持っていたら、食べ物を温められます。スマートフォンを持っていたら、いつでもどこでも、メールやインターネットができ、ゲームも楽しめるようになります。スマートフォンという機械がそれらを提供してくれているわけです。

 それがここでいう「コンテンツ」です。

 売るものは形がある「モノ」でも構いません。コンテンツ(お客さんがほしい!と思う要素)がモノに内蔵されていたら、モノを売っても構わないのです。

 iPhoneはモノですね。ですが、iPhoneを持つことは驚きの体験でした。iPhoneは、お客さんが「これやりたい! こんなものがほしい!」という“コンテンツ”を提供していたのです。

 しかし、これを「モノ(機能)」として捉えてしまうと、完全に方向性を見失います。iPhoneが発売された時、日本のメーカーで、同じようなモノが生産できないか検討されたそうです。この時、そのプロジェクトリーダーを担当していた方のお話を聞いたことがあります。

「上がってくる企画書が、みんなスペック重視で絶望した」

 要は、「うちなら、モノ(機能)としてiPhoneよりいい商品が作れます。より高いスペックのモノを作れます」というコメントしか上がってこなかったということなのです。

 iPhone自体は物質的なモノですが、みんながiPhoneを持っているのは、その機能をほしいからではありません。iPhoneが提供するコンテンツをほしいからなのです。

ぼく自身、消費者としてこのエピソードを体験しました。それまで使っていたiPhoneの調子が悪くなったので、機種変更をしに携帯ショップに行った時の話です。新しいiPhoneを買いに行きましたが、ショップにはいろいろな携帯が並んでいます。そこでふと「別にiPhoneじゃなくてもいいかなぁ」と思うようになり、日本製の携帯端末を手に取ってみていました。

 一つ気に入ったのがあったので、それにしようと決め、店員さんに手続きを依頼しました。すると、その機種はiPhoneの最新モデルよりも高いことがわかりました。勝手に「iPhoneが一番高く、他の機種はiPhoneより安い」と思い込んでいたので、かなり意外でした。店員さんに「あ、iPhoneより高いんですね」と言うと、「そうなんです。でも、カメラの性能とか、音楽を聴く時の音質はiPhoneよりいいですよ」との返答。

 なるほど、たしかに内蔵されているカメラの画素数は、デジタル一眼レフ並みです。もはやプロが使うくらいのレベルです。音質も“ハイレゾ”に対応しているようで、本当にいい音で音楽を聴くことができそうです。もはや携帯電話ではなく、プロのカメラであり、音響機器です。さすがだと思います。

 ただ、ぼくはそんなスペックを望んでいたわけではありませんでした。その機能があっても構いませんが、別になくてもいい。「どっちでもいい要素」なわけです。そして、もしその「どっちでもいい要素」のせいでiPhoneより高くなっているとしたら、本末転倒ではないでしょうか?

 実際問題、画素数をプロ並みにまで求めている人がどれほどいるでしょうか? ぼくが富士フイルム社にいた時、「パソコンの画面で見るくらいなら、30万画素あれば十分、Lサイズ(通常の写真サイズ)に焼くなら、80万画素あればOK」と言われていました。よほど拡大してみない限り、それ以上の画素数があっても、実際は意味がないんです。

 もちろん、画素数も多い方がいい気がするし、“ハイレゾ”対応もうれしいでしょう。でも、ぼくにはこれが「ハード機器の機能重視」に見えて仕方がありませんでした。

「端末代は高くなります。でも、カメラのスペックはiPhoneよりずっと高いです」というスペック重視の売り方では、もはや消費者の気持ちを動かせません。そのことを強く実感した出来事でした。

「すべての商品は、それが持っているコンテンツを売っている」

 そういう視点で世の中を見渡してみてください。そして、売れている商品と売れていない商品を見比べてみてください。かなりわかりやすい差が見えてきます。そして同時に、売れる商品を作るためにはどうすればいいか、つまり売れるコンテンツを作るためにはどうすればいいかが自分で見つけられるはずです。

参照

人は「何に」お金を払うのか?売れる物には必ず「○○」がある
目を惹くデザイン、キャッチコピー、SEO対策……それらは売れるかどうかを決定づける要素ではない。すべては商品、サービス、サイト等の「中身」が人を惹きつけるかどうかで決まる。

木暮太一: 作家・出版社経営者・言語化コンサルタント

キャリア・スキル どうすれば、売れるのか?

目を惹くデザイン、キャッチコピー、SEO対策……それらは売れるかどうかを決定づける要素ではない。すべては商品、サービス、サイト等の「中身」が人を惹きつけるかどうかで決まる。では、その中身とは何か? 新刊『どうすれば、売れるのか?』から一部を抜粋して紹介。

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